地域医療ニュース

自分の住む地域の医療について考えてみよう!

がんと地域医療をテーマにした医療フォーラムが
長生郡市で開催

2011.12. 27   

 一方で、患者側にも問題があると指摘した。医師にとってのやりがいとは技術向上であったり、尊敬・感謝であったりする。ところが、医師の過酷な状況に対する患者の理解は低く、医師の立場を無視し自分の都合だけで行動する人たちがいる。実際に医師に暴言を吐いたり、中には暴力を振るったりする患者やその家族もいるという。また、休日、夜間など診療時間外に、ごく軽い症状で緊急性もないのにわざわざ診察を受けに来るいわゆる「コンビニ受診」も問題となっているという。こういう悪循環が続くと、いずれ医師も去り、ひいては病院がなくなってしまうことすら懸念されているのが現状である。

 では、地域医療を守るために患者、地域住民ができることは何なのか。伊関教授によれば、まずはできるだけ地元の病院の診察を受けること、そして、できるだけ通常の診療時間内に受診し、休日・夜間は本当に緊急の治療が必要な病気になった際にのみ病院に向かうという「知恵」が必要だという。

地域医療を守るために住民ができることは?

 また、健康に気を使うのも重要。自分の体のことを考え、きちんと検診も受ける。そうすると、健康不安も減り、そうした不安な気持ちを解消するためだけに、昼夜を問わず病院に駆け込むということもなくなる。自分の体のことを考えない「無関心」、そこから生まれる根拠のない「不安」、さらに、医師の状況に思いを至らせず、自分の病気や体、そして気持ちを医師に丸投げする「人任せ」、この3つの要素が問題であり、これがなくなれば、ムダな医療資源の消費を抑えることができるはずだとする。

 そのためには、自分の体や病気について関心を持つとともに、医療や健康について地域の人同士で考えることが重要となってくる。また、医療は人が人に対して行うサービスであり、現場で医療を行う医師や看護師がやる気をもって仕事に向かうようにしなければならない。そこで必要となるのは、制度や強制ではなく「共感」だと伊関教授は語る。

 実際に、住民の行動が「共感」を広げ、ひいては地域医療の再生に成功したモデルとして兵庫県立柏原(かいばら)病院の事例を紹介した。柏原病院は、兵庫県丹波地域の中核病院だったが、医師不足が深刻で、とりわけ小児科医が2名にまで減り、小児科存続の危機に立たされた。