医療現場からの提言

2018年

vol.07 うつ病との見極め重要

気分が沈み込むことは特別なことでしょうか

渡邉:

大切な人と離死別したとき、大きな失敗をしてしまったときなどに、気分が沈み、物事に手がつかなくなることは、多くの読者の皆様が経験していることと思います。このときの心の反応はとても自然なことで、通常は、時間の経過とともに静かに和らぎ、もとの体調や生活を回復していくものなのです。

医療機関に相談する目安は

渡邉:

では、どんな場合に、そのままにしておかず、医療者に相談したほうが良いのでしょうか?その目安は、悲しみや落ち込みの特徴と持続時間です。「気分が沈んだり、憂うつな気持ちになったりする」「物事に対して興味がわかなかったり、趣味も心から楽しめない」。このような状態が、2~4週間以上、毎日、一日中続く場合は、「うつ状態」に陥っている可能性が高く、さらに睡眠や食欲の変化、疲労感、涙もろさなどがみられる場合は、すみやかに医療機関を受診することをお勧めします。

うつ症状とうつ病は違うのですか

渡邉:

しかし、うつ症状を認められる人が皆「うつ病」と診断されるわけではありません。うつ状態は、人で高度に発達した大脳の疲労を表す共通サインなのです。背景に大きな体の病気が隠れていたり、ご高齢の方では、認知症の始まりの症状であったりします。医療機関では、一見同じようなうつ状態に見えても、その方の生活歴や年齢、元来の性格、症状経過を丹念に聴き、必要に応じて血液検査や脳画像検査を行って、うつ症状に潜む原因を慎重に見極めていきます。
うつ病と"うつ病に一見みえる"その他の病気では、治療法がまったく異なることがあります。原因によっては、うつ病用の薬を使うと効果がないばかりか、かえって症状を悪化させてしまうこともありますので、両者の見極めはとても重要なのです。

BACK INDEX NEXT
公益社団法人 千葉県医師会 CHIBA MEDICAL ASSOCIATION みんなで高めるいのちの価値 ~健康と福祉のかなめ~
〒260-0026千葉県千葉市中央区千葉港4-1
TEL 043-242-4271
FAX 043-246-3142