医療者から見た地域医療のいま

地域医療を支える「かかりつけ医」?わが町のお医者さん?

「病気を診ずして、病人を診よ」を実践して40年

2012. 09. 05   文/梅方久仁子

匝瑳市 守医院院長 守正英氏

地域の子どもを集めて、剣道クラブを

地域の子どもたちに、剣道を教えていたそうですね。地域とのつながりを大切にしておられるように思います。守先生は、剣道をかなりおやりになるのですか。

 中学生のときに剣道を始めて、学生時代まではずっと続けていました。医者になってから10年は忙しくてできませんでしたが、一応、剣道七段です。

七段とは、すごいですね。

 ありがとうございます。でも、私よりもずっと強い友達がいるので、私などはただの下手の横好きです(笑)。

 剣道クラブは、息子が小学校4年生のときに剣道をやりたいと言い出したのがきっかけです。その強い友人が一緒に先生をやってくれるというので、他の子どもも集めて小学校の体育館を借りて教えることにしました。12年くらい続けましたが、平成12年に千葉県医師会の仕事をやるようになるとできなくなって、若い人に指導を代わってもらいました。

先生はスポーツ医の資格をお持ちだそうですが、剣道との関係からですか。

 スポーツ医の資格をとったのは、高校の剣道部の先輩の影響です。霜禮次郎さんという整形外科医で、大学も同じでした。この人は剣道のほかに射撃が強くて、バルセロナオリンピックでは射撃の監督でした。ロサンゼルスとソウルオリンピックでは、チームドクターも務めています。日本体育協会が認定スポーツドクター制度を作るときにこの先輩が関わったので、「お前も取れ」と勧められたんです。

学校時代の先輩やお友達とのつながりが続いているのですね。人間関係を大切にしておられるように思います。スポーツ医になって何か役立ったことはありますか。

 勉強して分かったのですが、スポーツ医は病気だけではなく、身体全体を見るんです。そういう意味では、総合医と共通点があると思います。

将来について、息子と朝まで話し合った

ところで先生は医師になってよかったと思いますか。お子さんに後を継いで欲しいですか。

 私は医師にならざるを得なかったので、考える余地がありませんでした。医者の家には医者がいないとまずいと思うので、子どもに医者になって欲しいとは思いました。

 息子は今34歳で、医師になって千葉医療センターに勤務しています。医学部に行くように強制はしませんでしたが、高校生の頃に一度、将来について朝までとことん語り合ったことがあります。そのときには、「医者になってほしいんだ」という思いをはっきり伝えました。もちろん一晩で結論など出ませんが、自分の思いを言うだけ言ってよかったと思います。

医師の子どもの中には、親の姿を見て「こんなに忙しいのはイヤだ」と思う人も多いようですが。

 確かにそうですが、よく話をすれば分かると思います。ですから、友人にも「子どもとは一度膝詰め談判しなくてはダメだ」と話しています。きちんと話をしなかった友人の子どもは、医師にはなっていないようです。

 息子は医師になってくれたので、あとはどこで働いてくれてもいいと思っています。でも、心の底では、戻ってほしい気持ちもあるのかもしれません(笑)。