医療者から見た地域医療のいま

地域医療を支える「かかりつけ医」?わが町のお医者さん?

「病気を診ずして、病人を診よ」を実践して40年

2012. 09. 05   文/梅方久仁子

匝瑳市 守医院院長 守正英氏

それで、東京慈恵会医科大学に進まれたのですね。

 そうです。卒業したのは、ちょうどインターン制度がなくなって研修制度に切り替わった1969年です。大学で1年、その後は国立千葉病院(現・独立行政法人国立病院機構千葉医療センター)で研修しました。

 研修が終わると、母は私がやっと医師になったと思ってしまったので、戻らないわけにはいきません。でも、研修が終わったばかりでは、まだ何もわかりません。最初の頃は、患者さんに信用されないのが、つらかったですね。そこで週に2回、国立千葉病院に通って修行を続けました。午前中に病院で診察したり手術をしたりして、昼食もとらずに八日市場に戻る。そんな生活を5、6年は続けました。

大変でしたね。ところで、研修中はどのような医師を目指して勉強されましたか。

 専門は外科で、当時新しく開設された小児外科には特に興味を持っていました。ただ、いずれは帰って医院を継ぐ必要があったので、外科以外にもいろいろな診療科を回りました。今でいう総合医のようなものを目指していました。

医師同士のネットワークで支え合う

開業後は、専門の外科以外も診察されたのですか。

 患者さんが来れば、どんな病気でも診ました。その頃うちには脳外科や整形外科など、あらゆる手術ができる機器がそろっていました。父の代に建てた医院を母が改築して、設備を整えてくれたのです。どうやら母は、病院を建てれば私が帰ってくると思ったようです(笑)。

 ともあれ設備があるので、専門の先生を応援に呼べば何でもできました。開腹手術が必要なときには、応援の専門家に執刀してもらい、あとの管理はうちでやればいいわけです。ただ、今は手術には麻酔医が必要だったりするので、うちではやらずに大きな病院に患者さんを送り出しています。