医療者から見た地域医療のいま

現場の人間が集まって
必要な情報を受け渡せる「連携パス」を

2012. 11. 02   文/梅方久仁子

東京湾岸リハビリテーション病院 院長 近藤国嗣 氏

交通の便がよければ、
遠方からも来る

現在、この脳卒中連携パスはどのくらい使われているのでしょうか。

近藤 千葉県の県西地域では、ほぼこのパスが使われています。回復期を経由して、去年1年間でこのパスを使った患者さんは、千葉県でだいたい1000人くらいです。圏域人口では450万人くらいですから、私たちは「日本で一番大きなパス」と呼んでいます。

 私たちの病院が受け入れている脳卒中の患者さんでは、千葉県内で発症した人のうち約70%が、パスを使って来ています。東京には東京東部のパスがありますが、パスを使って来るのは20%くらいです。

 パスを使っていない病院からは普通の紹介状で来られますが、欲しい情報が入っていなくて、あとから何度も問い合わせが必要になることがあります。パスで来た患者さんは、さらに何か聞かなければいけないということは、あまりありません。また、このパスを使って来ると認知や精神的問題などがあってもコントロール方法がわかるので、ほとんどすべての患者さんを受け入れることができるようになりました。

 私たちのパスは、現場で本当に必要な情報を伝えるものだから、うまくいっているのだと思います。いっそ全国で、これを使っていただけるといいと思うのですが(笑)。

 ただ、千葉県でもあまり使われていない地域もあります。近くに回復期病院がないところや、同一病院・法人内での連携だけで済むところでは、使われていません。それから常磐線沿線は、交通の便では茨城県や埼玉県との結びつきが強いので、千葉県のパスはまだあまり使われていません。

 地域連携では、交通網の影響が大きいと思います。回復期リハビリ病院に移るときには、患者さんや家族にとっては、家から公共交通機関でどれくらいかという点が重要です。直線距離で近くても、電車などでは時間のかかるところは不便なのです。私たちの病院(習志野市)は交通の便がよいので、銚子や君津、東京の品川のような遠方からも来ます。行政が考える2次医療圏よりも、実際にはずっと広い範囲から患者さんは来ています。だからこそ、広域をカバーする全県共用の連携パスの意味は大きいと思います。