医療者から見た地域医療のいま

「コンビニ受診」も「救急車の適正利用」も、
患者の目線からとらえ直すことが重要だ

2012. 01. 06   文/大森勇輝

宍倉病院 副院長 宍倉朋胤 氏
宍倉病院 副院長 宍倉朋胤 氏

 千葉県、そして茂原市長生郡医師会双方で救急医療を担当している宍倉病院の宍倉朋胤副院長。救急医療の中心人物として、現場に長く携わってきた医師の目から見たこの地域の医療問題の本質とは何なのか。また、医療関係者、そして住民の地域医療に対する姿勢はどうあるべきなのか。精力的な取り組みを続ける宍倉医師に話を伺った。

都会と比べてしまうと、
地域医療は必ず崩壊する

日ごろから感じている地域医療の問題点はどのようものでしょうか?

宍倉 まずこの地域を日本の中の長生地域ととらえるか、世界の中の長生地域ととらえるかで見方が変わってきます。私は高校時代まではずっと茂原におりましたが、せめて大学生になったら違う環境で生活してみたいと考え、北海道の旭川にある旭川医大に進学しました。そして大学を卒業後、千葉大学医学部附属病院の第一外科(現・胆管膵外科)に所属し、研修のため全国の関連病院を回ったのです。

 たとえば、都立府中病院に勤めていたときに小笠原諸島の母島に1カ月赴任したことがあります。そこには高度の医療はありません。心筋梗塞や脳梗塞を起こしても緊急手術もできないようなところです。ところが、住民はとくに健康不安におびえているわけでもない。島には高度な医療はないけれど、豊かな自然など代わりに得られるものがいくらでもある。何でもかんでも手に入るわけではないということを土地の人たちはわかっている、そこが非常に勉強になりました。

 そうした経験から、千葉県は首都圏という観点から見ると医療資源が不足しているが、学生時代に過ごした北海道をはじめ全国的に見たら、そこまでではないかと考えるようになったのです。