地域住民からのメッセージ

地域医療を変えるために、
今こそ住民が主体となって声を上げなければ

2012.03.07   文/大森勇輝

地域医療の今後の課題は
住民の声を束ねる組織づくり

ただ、医療環境を充実させるには財源が必要です。

高貫 この地域にとって、財政は大変な問題です。私が青年会議所の理事長だった2006年ごろの茂原市の借金は約800億円。長生郡市広域市町村圏組合の中でも、茂原市は消防、ゴミ処理などさまざまな方面で負担割合が大きく、それがどんどん膨らんでいきました。その結果、破綻した北海道の夕張市のようになる寸前まで行ったのです。

 また、当時のいわゆる箱もの行政などのツケも回り、茂原は財源がなかなか確保できません。ところが、住民は医療同様、財政が逼迫(ひっぱく)しても関心を持ちませんでした。そして、ふたを開ければ、病院は作れないし、小学校の耐震化もできないと。後になって、住民がその状況に気づいたのです。

 一方で、その財政破綻の危機に対して、青年会議所でできることがあるのではと思いました。そこで2006年、評論家の猪瀬直樹さん(現・東京都副知事)にダメ元で講演の打診をしたんです。当時、猪瀬さんは地方分権推進の中心人物で、道路公団とも戦っていました。そんな姿勢に共感しまして、茂原の現状をメールで伝えたところ、快くOKをもらえました。

高貫氏が理事長を務めていたときには、猪瀬氏のインタビューを会報に掲載した。
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 そして、実際に茂原で講演会を開き、ついでに茂原の現状も見てもらいました。その後、猪瀬さんはそのことを週刊誌に書きました。そうしたら、茂原市は大騒ぎになりました。これで波が立ち、以来、市議会議員なども「茂原は夕張のようにはならない」とことあるごとに口にするようになりました。そして、そうした財政の問題を見ていくうちに、医療も地域が抱える大きな問題だと気づきました。