地域住民からのメッセージ

自治体病院のオーナーは「住民」だという自覚、
保険制度も「みんなの財産」だという意識が必要

2011.11.16   文/梅方久仁子

伊関友伸 氏

自治体病院のオーナーは「住民」

なるほど。自治体病院も大切にする必要があるということですね。

伊関 その通りです。それに自治体病院には、地域住民が自分たちの病院を自分たちで守ろうという動きになりやすい利点もあります。

 自治体病院のオーナーは自治体の首長ではなく、住民です。住民がその地域に必要な医療は何かを考えて、目的達成のために協力していく。そういうことが求められる時期になっています。

協力というと、地域住民はどうすればいいのでしょう。

伊関 まずは、“お客様”意識ではなく当事者意識を持つことだと思います。残念ながら、いまは患者が自分の都合で医療者を使うような傾向があります。それがコンビニ受診とかモンスターペイシェントの問題に現れています。医師を“崇(あが)め奉(たてまつ)れ”と言いたいのではありません。自分たちの命を守ってくれる人たちに対して、少なくとも人間としての敬意を示しましょうということです。

 医療は人が人に対して行うサービスです。相手を人として尊重して気持ちよく仕事をしてもらうことが、最終的には自分たちに返ってきます。

 実際に医師がいなくなってしまった地域では、住民は当事者意識を持たざるを得なくなっています。兵庫県丹波市の「県立柏原病院の小児科を守る会」(http://mamorusyounika.com/)のように地域住民が立ち上がり、情報提供や呼びかけをした結果、コンビニ受診が減るといった効果を上げています。

 患者が“お客様”意識になってしまうのは、いまの医療がどういう状況なのか、患者には見えにくいという問題があると思います。行政は、地域住民に、地域医療の現状をもっと伝えていかなくてはならないと考えます。