地域住民からのメッセージ

自治体病院のオーナーは「住民」だという自覚、
保険制度も「みんなの財産」だという意識が必要

2011.11.16   文/梅方久仁子

伊関友伸 氏

医療の高度専門化も医師不足の原因

新臨床研修制度は「きっかけ」だとおっしゃいましたが?

伊関 実は医師不足の根本的な理由はほかにもあって、新臨床研修制度はその「きっかけ」にすぎないと考えています。

 問題の1つは「医療の高度専門化」です。いまは専門化が非常に進んでいて、例えば内科でも循環器内科、消化器内科、呼吸器内科といったぐあいに細分化されてきています。極端な話、肝臓だとか腎臓だとか、臓器レベルで専門分野が分かれてしまっています。

 このように高度に専門化すると、医師はそれぞれの専門分野に詳しくなりますが、専門外のことはよくわかりません。それでも患者さんが来れば、診察しないわけにはいきません。専門外の診察は医師にとって大きなストレスなので、どうしても、さまざまな専門医が集まっていて協力し合えるような、ある程度医師数が多い病院に勤務したくなります。そのため専門化が進むほど、医師数はたくさん必要になります。

 それから、若い医師にとって、専門技術を身につけて「専門医」の資格を取ることがキャリアとしてとても重要です。若い医師たちは、専門分野の指導医がいて技術を学べる病院に勤務したいと思っています。だから、若手医師は、いい指導医がいて専門技術が学べる病院に集中してしまい、そうでないところには集まりません。

 ただ、逆に言えば、多少立地条件が悪くても専門技術を学べる病院には若い医師が集まります。これは医師不足に陥った地方病院が再生する大きな手がかりにもなっています。