地域住民からのメッセージ

自治体病院のオーナーは「住民」だという自覚、
保険制度も「みんなの財産」だという意識が必要

2011.11.16   文/梅方久仁子

伊関友伸 氏

都市部での高齢化への対応

つまり医師が特定の病院、多くは都会の大病院に集まることが地方の医師不足を招いているということでしょうか。各地の病院が医師に来てもらえる条件を整えれば、問題は解決するのでしょうか。

伊関 個々の病院の努力は大切ですが、それだけでは解決しません。もうひとつ重要な問題として、「高齢化」があります。高齢者人口が増えると、どうしても医療の需要が増大します。

 いまでも高齢化が進んだ地域では医師が足りなくなっているのですが、いまから約20年後に首都圏の都市部では、団塊の世代を中心に高齢者人口が急激に増加します。例えば千葉県ですと、松戸、柏、船橋といった都市部で、いま東北や北海道で起こっているような医師、看護師、医療施設の不足が確実に起こってきます。「都市部でも」ではなく、人口が多い「都市部で」特に起こると考えています。

それは深刻な問題ですね。将来の医師不足に備えて、できることはありますか。

伊関 一番重要なのは、医療への負荷を減らすことでしょう。例えば健康づくりをしっかりやって、病気になる人を減らす。

 それから、地域コミュニティーを支えて、人を孤立させないようにすることも大切です。人間は孤立すると、体調を崩すなど病気になりやすくなります。また、本来なら在宅で対応できる人でも入院するしかないなど、より多くの医療資源が必要になります。限られた医療資源を有効に使うためには、医療や健康の問題に限らず、地域コミュニティーを支えていかなくてはなりません。

 それから、もちろん将来を見越した医師の養成や、医療施設の拡充も必要です。これから都市部で新しい病院を建てるなら、少なくとも増築できるスペースを確保しておくべきでしょう。