医療現場からの提言

2017年

vol.12 極端な温度差に注意を

気候と血圧は関係があるのでしょうか?

中里:

気温の変化と血圧との間には密接な関係があることが知られています。その背景には体温調節のメカニズムがあり、通常気温が低下すると体温が下がるのを防ぐため、体内の熱を逃がさないように血管が収縮し、血圧が上昇します。逆に気温が高いときは、体内の熱を放出するために血管が拡張することで、血圧が低下する仕組みになっています。

なぜ、そのようなことが起こるのでしょうか?

中里:

血管の収縮や拡張が血圧の変動を引き起こすのは、次のような理由からです。つまり血管が収縮すると、内腔のサイズは細くなるため、血流に対する抵抗が高くなります。従って心臓から血液を安定して送り出すためには、より強い力(血圧)が必要となります。冬場になり、気温が下がると、寒さにより血管が収縮するので結果として血圧が高くなるというわけです。逆に血管が拡張すると、内腔は太くなり、血流に対する抵抗も低くなるため、血液を送り出す力(血圧)も少なくてすむので、気温が上がる夏場には血圧が下がる傾向を示すのです。

病気との関係もあるのでしょうか?

中里:

これまで日本人の心筋梗塞や脳梗塞などの、いわゆる心血管イベントによる死亡率は、夏場に比べると冬場に約2倍程度まで増加するということが報告されています。さらに、実際の血圧値で比較した場合、心血管イベントによる死亡は、収縮期血圧で20mmHg、拡張期血圧で10mmHg上昇すると、それぞれ2倍に増加するとも言われています。冬場の気温の低下による血圧上昇は、明らかにこうした心血管イベントを引き起こす誘因の一つと考えられています。

発症を防ぐにはどうしたらいいですか?

中里:

高血圧症の人は、きちんと血圧をコントロールするのはもちろんですが、冬場は、心血管イベントの発症を予防する意味でも、極端な温度差がある場所の移動には防寒に十分注意を払い、急な血圧上昇を起こさないことが大切です。

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