医療者から見た地域医療のいま

終末期のがん患者に対する在宅緩和ケア
これからの在宅医療の問題を考えるモデルに

2012. 04. 06   文/梅方久仁子

さくさべ坂通り診療所 大岩孝司医師
さくさべ坂通り診療所 大岩孝司医師

 千葉市のさくさべ坂通り診療所は、終末期のがん患者に対する在宅緩和ケアを専門に診療している。がんの在宅緩和ケアがうまくいくためには、どういったことが必要なのだろうか。今後の在宅緩和ケアに重要なのは何か。千葉市でさくさべ坂通り診療所を運営する医師、大岩孝司院長にうかがいました。

外科医として
緩和ケアに取り組んで来た

どういう経緯で、がん患者在宅緩和ケア専門の診療所を始められたのですか。

大岩 私は外科医として、ずっと肺がんを専門にしてきました。昔はがんといえば「切って治す」ということで、診断から治療まで、すべて外科医の担当だったのです。ご存じかもしれませんが肺がんというのは難治性のがんで、私は必然的に終末期の医療に多く関わることになりました。がんの痛みを和らげる“緩和ケア”については、30年くらい前から関心を持って、精力的に取り組んできました。

 また20年くらい前からは、自宅で最期を迎えたいと願う患者さんのために、訪問診療をするようになりました。でも、外科医としての勤務のかたわらでは、どうしても片手間になってしまい十分なケアができません。そこで10年前に開業し、本格的に緩和ケアに取り組むことにしました。

 実は最後に勤めた東松戸病院へは、緩和ケア病棟を立ち上げるために行きました。外科医としての診療が忙しくなりすぎてその話は立ち消えになってしまったのですが、緩和ケア病棟の準備をするうちに、緩和ケアの本道は自宅での療養だという思いが強くなり、在宅緩和ケア診療所の道を選んだわけです。