医療者から見た地域医療のいま

災害時に地域の保健医療を守るには?
「普段からできること」と「地域の力」

2012. 02. 10   文/梅方久仁子

東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科・顎顔面外科学分野助教 中久木康一 氏

最低でも5年くらいは続けないと

東日本大震災の被災地でも活動をしていると聞きました。実際どのような支援活動をしているのでしょうか。

中久木 まずは東京武道館に避難して来られた人たちの支援に行って、その後、現地に出かけるようになりました。今回は、1カ所にずっと長くいることはせずに、日帰りや2、3日の短い滞在を何度も繰り返しています。訪問先もいわき市、石巻市、女川町と変わりましたが、今は女川町をメインに継続的に関わっています。

 それから、「シェア」が気仙沼市で保健医療コーディネーターをやっていたので、そこに参加しています。

保健医療の面で、東日本大震災がこれまでの災害と違う点はありますか。

中久木 救命救急が必要な期間が、かなり短かったのが特徴です。非常に広範囲な災害で、必要な時期に緊急医療チームが被災地に入れなかったこと、津波という被害の状況によって、被災直後に生死がほぼ分かれてしまったことが原因だと思います。

 ただ、その後、保健支援活動が必要な状態が続いています。病院や診療所がなくなってしまったとか、保健師さんが避難所に行ってしまって保健所の人手が足りない、訪問看護やホームヘルパーが来なくなったといった問題が、今でも各地で広範囲に起こっています。

 今回の震災は非常に大規模で、復興にも時間がかかります。例えば女川町の復興は8年計画になっています。がれきを撤去してきれいにするのに2年、山を崩して盛り土をするのに3年。5年経ってから、やっと復興住宅ができはじめます。地域保健を考えるにしても、むこう5年くらいは仮設住宅での仮暮らしになるので、仮のコミュニティーなんですね。支援をするのも最低5年くらいは続けないと無責任だと思うので、継続的に関わっていくつもりです。