地域医療ニュース

地域別公開講座「最期まで自分らしく生きる」
が開催される

2013. 11.28   文/梅方久仁子

家族の力をどう引き出すか

千葉大学医学部附属病院副院長・企画情報部教授 高林克日己 氏
さんむ医療センター
訪問看護ステーション
宮崎友見子 氏

 続いて第2部は「看取りの現場から」ということで、2人の在宅医療担当者から、在宅での看取りの事例が発表された。

 最初は、さんむ医療センター訪問看護ステーションの宮崎友見子氏だ。

 厚労省の「終末期医療に関する調査」によれば、6割以上の人は自宅療養を望んでいるが、最期まで自宅で過ごしたいと回答するのは1割だ。できることなら最期まで自宅でと思っても、家族への負担や急変時の不安から、躊躇してしまうのだろう。

 さんむ医療センター訪問看護ステーションで、がんの終末期患者を自宅で看取った例を報告する。

 患者は1人暮らしの90歳代の男性で、すい臓がんとがん性腹膜炎で、3カ月持たないだろうという診断。息子さん夫婦は、県内の遠方に暮らしている。

 当初、自宅では薬を適切に服用できず、痛みのコントロールに失敗。しかし入院すると、病院はいやだと言って、すぐ退院してしまう。

 2回目の退院後に、残りの時間が少ないことを家族に説明。毎日訪問して、家族との電話連絡を密接にしたところ、息子さん夫婦とお孫さん夫婦が交代で、できるだけ24時間付き添うようになった。どうしても無理な場合は、近所の人、市の高齢福祉課、ケアマネジャー、町の薬剤師さんらに、様子を見てもらえるようにした。さらに緊急ボタンを設置し、呼べば看護師がいつでも対応すると説明した。

 その結果、「家に帰って良かった」と言い、お孫さんに見守られて自宅で最期を迎えられた。

 今回は、看護師の働きかけで、家族の結束を促すことができた。家族の力は重要で、専門職は、どう家族の力を引き出すかだ、とのことだった。

すい臓がんとがん性腹膜炎を患った90歳代の独居男性の例を報告。県内でも遠方に住んでいた家族が、訪問看護ステーションやケアマネジャー、近所の方などみんなの力を借りながら付き添うことで最期は自宅で看取ることができたという。
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