地域医療ニュース

高齢化と死の問題に真正面から向き合う
終末期医療に関するシンポジウム開催

2013. 05.21   文/大森勇輝

胃ろうは終末期医療の最大の課題

 社会はますます高齢化へと歩を進める一方、高齢者個人個人の終末期というものにも問題が出てきている。例えば、高齢者の終末期というものが一体いつなのか、予測・判断するのは難しいという。90歳以上の死因トップは、女性が心疾患で男性は肺炎。心疾患などの臓器不全の終末期は入退院の繰り返しとなる。また、肺炎というのはあくまで直接死因で、そうなるまでに、食べる意欲の喪失やうつ状態による食事拒否、発熱、生活機能の低下による介護生活が続き、最期は肺炎で死亡ということになるのだと説明した。

 こうした終末期医療の最大の課題が胃ろうだろう。胃ろうは、経口で栄養摂取できない人に対し、胃に穴を開けてカテーテルで栄養を送るもの。中でも、内視鏡を使ったPEG(経皮内視鏡的胃ろう造設術)と呼ばれる胃ろうが1990年代から導入された。

 胃ろうについては賛否両論分かれている。高齢者でも容易に実施でき、経鼻経管栄養より痛みも少なく、経口摂取との併用もできるなどの理由で胃ろうは有効だとする専門家がいる。一方で、胃ろうで何かが改善するという明確なエビデンスがないのではと懐疑的な専門家も多い。実際、胃ろうの効果を認めないのは欧米の医学会のコンセンサスとなってきており、また、胃ろうを造設しても88%が肺炎で死亡という調査結果もあるという。

 ここで、もう一つ大きな問題となるのが、胃ろうや経管栄養を差し控えた場合の影響である。経管栄養の差し控え=餓死という考えがあること。差し控えることにより、胃ろうで恩恵を受ける可能性のある人の機会を奪ってしまう危険があること。家族は経管栄養や胃ろうをしなかった場合に本当にやらなくてよかったのかといつまでも悩むこと。そして、経管栄養を途中でやめることは、殺人にあたるとする考え方があり、医療訴訟や刑事訴追の恐れがあること。こうしたことが大きな問題点だという。

 事実、過去には医師が患者の呼吸器を外すといった終末期医療をめぐる事件がいくつか起きており、刑事訴追の例もある。この場合、無罪となるか有罪となるかの違いは、積極的処置をしているか否かということだという。

差し控えの問題点。(クリックすると拡大します)