地域医療ニュース

「本当に必要なときに救急車が来ない」という事態を避けるために、みんなができることは?

2013. 02.14   文/梅方久仁子

軽症による救急車利用はかえって損!

 軽症患者は、診療所が閉まる夕方18時ごろに増え、夜間診療所が開く20時頃になると減る。これは、夕方に病気が起こるわけではない。朝から具合が悪いのに、様子を見ているうちに、かかりつけ医の診察時間が過ぎてしまい救急車を呼ぶためのようだ。

2時間おきの種別搬送人員の推移。軽傷者の数は16時から20時の間に増え、20時からは減少に転じている。(クリックすると拡大します)

 しかし、夜間に救急車を呼ぶと、遠方の知らない病院に運ばれてしまうことがある。それに高齢者の場合には、軽そうに思っても、重い病が隠れていることがある。朝から具合が悪いときは、様子を見たりせず、日中、早めにかかりつけ医の診察を受けよう。経過を知っているかかりつけ医なら、さまざまな説明が省けるし、安心できる。

 中には病院で待たされるのがいやで、救急車を呼ぶという人もいる。しかし実際には、救急車で行っても軽症なら後回しにされることがある。こういった受診では患者本人にとってもけっして得にはならない。

 さらに、軽症にもかかわらず、救急のための休日や夜間の外来を自分の都合を優先して受診する「コンビニ受診」は、救急隊だけでなく地域の医療機関をも疲弊させる。休日・夜間の救急診療は、地域の医療機関が交代で受け入れている。しかし、医療機関にとっては、これは大きな負担だ。負担が大きくなりすぎると受け入れが難しくなり、引き受け手が減っていく。実際に、長生郡市では4、5年前に入院設備がある2次救急施設の引き受け手が不足して、月のうち半分くらいが当番病院のない空白日になってしまった。関係者の努力で、現在は空白日はないものの、ぎりぎりの状態は続いている。「コンビニ受診」が減れば、医療機関の負担も軽減できる。

 救急車は便利だからと気軽に利用すると、本当に必要とする人が利用出来ず、必要なときに必要な医療を受けられなくなるかもしれない。いざというときに困らないために、緊急性のない救急要請は控えるようにしよう。