地域医療ニュース

医療連携の強化を図るツール
「地域医療連携パス」に関するシンポジウムを開催

2012. 07. 27   文/大森勇輝

まずは連携の担い手作りから始めるべき

江本直也氏
江本直也氏

 脳卒中連携パスの発表に続いて、日本医科大学千葉北総病院の江本直也氏が発表。ここでは、糖尿病に関する連携パスの厳しい現状が浮き彫りとなった。

 江本氏によると、現在千葉県の医療機関では、糖尿病の連携パスは使用されていないに等しいという。本来、連携パスは地域医療連携を推進するためのツールであるが、そもそも地域の糖尿病に携わる医療関係者は地域医療連携の必要性をあまり感じていない。つまり、ツールを使う/使わない以前の問題で、地域医療連携のあり方について話し合わなければならないのが現状だという。しかしながら、そこを飛ばしてツールの意義についての話に終始しているため、議論が成り立たないというのが江本氏の見解だ。

 現在、千葉県には約100万人もの糖尿病患者がいると推定されている。その一方で、糖尿病専門医など糖尿病に精通した専門職の数は非常に少なく、病気を管理するのは事実上不可能だとした。さらに、糖尿病の問題は、重症化すればするほど医療資源を集中的に投入する必要があり、その結果、軽度の患者への手当が薄くなり、やがて重症化してしまうという悪循環を生み出してしまうとも指摘。

千葉県における糖尿病の現状

 江本氏は、だからこそ糖尿病専門職の数を増やすこと、医師会、歯科医師会、薬剤師会がさらに連携を強めること、各関係機関が糖尿病患者の重症化を未然に防ぐため、定期的に専門医への受診を患者に勧めることなどを提言した。連携パスのあり方が問題なのではなく、まずそういったツールを使いこなせる連携の担い手作りから始めなければならないとした。