浦安市医師会

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健康コラム2008年

麻しん □薬害C型肝炎 □正常圧水頭症 □正常眼圧緑内障


麻しん

麻しんは麻しんウイルスによる急性熱性発疹性感染症で、発熱や咳・鼻水などのかぜ症状に続いて発疹が現れます。また、肺炎や脳炎といった重篤な合併症をおこすこともあります。麻しんは感染力が非常に強く、その経路は主に空気や飛沫感染です。免疫を持っていない人が感染すると90%以上が発症します。潜伏期間は10〜12日程です。麻しんには特効薬がないため、ワクチン接種が唯一有効な予防手段です。ワクチン接種によって95%以上に麻しんに対する免疫が出来ますが、数%は抗体が出来ない場合があります。また、一度ワクチン接種を受けても小学校5年生以上になって通常よりも軽い麻しんにかかる場合もあります。これは修飾麻しんと呼ばれ、ワクチン接種後に麻しんウイルスに接触する機会がないために免疫が低下したためです。このような人たちに免疫をつけるため、2006年から麻しん風しん混合(MR)ワクチンの2回接種(1歳時と小学校入学前年度)が始まりました。しかしここ数年、大学生や高校生の麻しん感染者が増え、社会的な問題になっています。また小学校五年生や中学生の発症もみられています。そのため2008年4月からは5年間の期限付きで、中学1年生と高校3年生に相当する年齢の人もMRワクチン接種の対象となりました。MRワクチンを2回接種するとかなり確実に免疫が保たれます。

この機会に是非MRワクチン接種を受けましょう。接種の対象外の方も任意接種としてMRワクチン接種可能ですので、ご心配な方は最寄りの医療機関に相談することをお勧めします。

【千晶こどもクリニック 中井 千晶】


薬害C型肝炎

薬害C型肝炎とは、フィブリノゲン製剤や非加熱凝固因子製剤の投与を受けたことによるC型肝炎の感染被害を指します。 製薬会社の調査によると、フィブリ ノゲン製剤の推定投与者数は約二十九万人であり、肝炎感染者数は一万人以上と 試算されています。

フィブリノゲン製剤は、人の血液を精製して製造される薬で、以前は産婦人科・外科等の幅広い診療領域において止血目的で使用されていました。しかし、1987年以前の製剤は非加熱処理であったため、C型肝炎ウイルス等の感染因子を完全には除去できなかったのです。米国では、1977年にFDA(米国食品 医薬品局)がフィブリノゲン製剤の販売譲渡を禁止したのですが、我が国ではFDAによる承認取り消し後においても、1988年に至るまで引き続き同製剤が使用されていました。今日、こうしたフィブリノゲン製剤の使用継続がC型肝炎ウイルスへの感染をさらに拡大させたという指摘がされているのです。そこで現在国や県では、薬害C型肝炎やその他の肝炎ウイルスも含めた対策が検討されています。
慢性C型肝炎は、C型肝炎ウイルスに感染した肝細胞が徐々に破壊され、治療せずにそのまま放置すれば、肝硬変・肝癌を発症する可能性の高い疾患です。 1987年以前に、フィブリノゲン製剤の投与を受けた等の心当たりのある方は、保健所または最寄りの医療機関(消化器内科)で相談されることをおすすめ致します。

【森下クリニック 森下 一】


正常圧水頭症

正常圧水頭症は髄液循環障害(ずいえきじゅんかんしょうがい)があるものの、 頭蓋(ずがい)内圧(ないあつ)が正常範囲内で脳室が拡大し、歩行障害・認知症・尿 失禁を呈(てい)する病気です。
その原因としては、原因不明におこる特発性水頭症と、脳出血、頭部外傷、感 染症、脳腫瘍などによっておこる続発性水頭症に分類されます。
症状は物忘れ、 注意機能の低下、思考・作業速度の低下といった認知機能障害に加え、歩行障害と尿失禁を古典的な三主徴(さんしゅちょう)とします。これらの症状は徐々に進行しますが、正常圧であるために、強い意識の障害が出現することはまれです。

診断法としては、CTやMRIで脳室の拡大、脳室周囲の低吸収域および脳溝 (のうこう)の狭小化(きょうしょうか)を認めます。ようついせんしで髄液(ずいえき)を排出するタップテストで症状の改善がみられれば、水頭症であり、手術により症状の改善が期待できます。 治療法は外科的治療が基本です。術式は脳室(のうしつ)腹腔(ふくくう)シャント 術が一般的ですが、高齢者が多いため、最近ではより低侵襲( ていしんしゅう) な、穿頭(せんとう)が不要な腰部くも膜下腔(くう)腹腔(ふくくう)シャント術を希 望される方が多いようです。
治療効果は続発性水頭症の場合、ほぼ100%に近い改善が望めますが、特発性水頭症の場合、効果は70%程度で、効果発現までに時間がかかり、約1年程度の経過観察が必要です。認知症を呈した場合いろいろな原因が考えられますが、水頭症も頭に入れてお くべき病気で、治療可能な病気です。認知症の疑いがある場合は早めに専門医を受診させるようにしましょう。

【くまがわクリニック  熊川 均】


正常眼圧緑内障

緑内障は、眼圧の上昇が病因の一つで視神経が侵され、視野(見える範囲)が狭く なったり、視力が落ちたりする病気です。白内障とならんで目の病気の中でも多 いものであり、「目の成人病」とも呼ばれ、四十歳以上の約二十人に一人が緑内障 であると報告されています。
緑内障は、適切な治療が行われないと失明すること があり、多くの場合、非常にゆっくりと視野が欠損して行き、本人が気がついた 時には手遅れという場合もあります。一旦障害を受けた視神経は再生することは なく、失われた視野や視力は回復しないのです。このため、緑内障は早期発見・ 早期治療が大切です。

緑内障にはいくつか種類がありますが、なかには眼圧が正常範囲(10~20mmHg)にもかかわらず視神経乳頭の構造が弱く、緑内障になる人がいます。これを 正常眼圧緑内障と呼びます。近年行われた全国的な調査の結果から、緑内障の約 六割がこの正常眼圧緑内障であることがわかりました。
緑内障の治療は、病気の進行をくい止めるために眼圧を低くコントロールする ことが最も有効とされています。具体的な治療法としては、薬物療法、レーザー 治療や手術が一般的です。薬物療法で眼圧コントロールが不十分な場合、レー ザー治療や手術を行います。大切な目を守るためには、悪化する前にできるだけ 早期に発見し、治療を開始することが大切です。発見の機会となる健康診断など を積極的に利用し、四十歳以上の方は少なくとも年一回は定期検診を受けましょう。

【すもも実眼科中山  中山 祐佳】

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