
野菜とビタミン
ビタミンの不足による病気の中で古くから知られていたのは、ビタミンCの欠乏による壊血病です。ヨーロッパでは、長い航海中、新鮮な野菜や果物が食べられないため、皮下や歯肉、関節などに出血を生じ、中には死ぬ人もあって、船乗りたちに大変恐れられていたということです。日本では、江戸時代に米を白米にして食べる習慣が広がった結果、ビタミンB1不足により、脚気にかかる人が多く出ました。幕末、14代将軍徳川家茂が長州戦争の陣中で、22歳の若さで亡くなったのは脚気が原因であると考えられています。19世紀末から20世紀初頭にかけての脚気の研究から、米ぬかの中に脚気を予防する成分のあることが分かり、これにビタミンと命名したのは、ポーランドのフンクという人でした。現在では、ビタミンはA、B1、B2、B6、B12、ニコチン酸、パントテン酸、葉酸、ビオチン、C、D、E、Kの13種類が知られており、栄養素の一つとして、体の調子を整える役割を果たしています。
近年のいろいろの学術調査で、野菜を十分に食べている人は長命であるという結果が報告されています。野菜にはビタミンA、C、ミネラル、食物繊維などが豊富に含まれております。また栄養的な意味だけでなく、食物繊維は便通を整え、腸内の病原菌やコレステロール、塩分、発がん物質などの排出を助けて、成人病の予防にも役立ちます。食事をよくかんで食べることによって歯も磨かれ、脳の働きをよくしてボケも防止するといわれています。
1日の野菜の必要量は300gで、このうち100gを緑黄野菜でとることが勧められています。両手にいっぱい野菜を乗せると約300gだそうです。野菜は生で食べるのが一番よいと思いがちですが、生野菜を毎日大量に食べるのはなかなか困難なことです。野菜の摂取量を増やすためには、加熱野菜や冷凍野菜を活用しましょう。
野菜を加熱することで失われるビタミンCは無視できる程度です。ミネラルや食物繊維は十分に残っています。茹でて瞬間冷凍した冷凍野菜は味も成分も家庭で調理したものとほとんど変わりありません。野菜が不足したかなと思ったら鍋料理、野菜をたっぷり食べるには最適の料理です。この場合、煮汁のなかに野菜の成分も溶け出しているので、煮汁も全部食べてしまう方がよいとされています。今日8月31日は「野菜の日」です。 だれでも野菜を食べることは健康によいと思っていますが、なかなか十分にはできません。ここでもう少し多く、野菜を食べるように努めてみてはいかがでしょうか。
倉持小児科 倉持正昭

