健康トピックス

2020.04.02

「COPD(慢性閉塞性肺疾患)」

COPD(慢性閉塞性肺疾患)とは

COPDは、慢性気管支炎や肺気腫などの病気の総称です。有害物質の吸入や大気汚染によって肺が炎症を起こし、呼吸がしにくくなります。ほとんどの場合はたばこの煙が原因で、COPD患者の90%以上が喫煙によるものといわれています。長期の喫煙歴があり、慢性的に咳や痰、労作時呼吸困難があれば、COPDが疑われます。
有害物質が長期にわたり肺を刺激すると、細い気管支に炎症を起こし、咳や痰が多くなります。その結果として気管支の内側が狭くなり、空気の流れが悪くなります。
肺の中にある肺胞は、酸素と二酸化炭素を交換する役割を担っていますが、有害物質が肺胞まで及び炎症を起こすと、肺胞の壁が破壊され、肺気腫(肺胞が古いゴム風船のように弾力がなくなった状態)となり、上手に空気を吐き出せません。その結果、酸素不足を起こし、息切れなどの症状を引き起こします。
またCOPDは、肺だけでなく、虚血性心疾患や骨粗鬆症、糖尿病など、全身のさまざまな病気の原因となります。肺がんになる可能性も高く、COPDの人は約10倍ほども肺がんになりやすいといわれています。COPDの治療が不十分の場合にはほかの病気も悪化しやすく、ほかの病気が不十分であれば、COPDの管理が難しくなります。COPDは進行する前に発見し、ほかの病気のコントロールをしっかりすることが大切です。

COPDの症状と増悪

COPDの初期症状は、咳や痰がみられる程度のため、病気と判断されにくいですが、肺機能の低下とともに息切れします。進行すると安静にしている時でも息切れをするようになり、さらに重症化すると、日常生活を送るために酸素吸入器が必要になります。COPDになると息切れがするため、日常生活の中で階段や坂道を避け、あまり動かないようになります。そうすると筋力や持久力が落ちてしまい、軽い運動でも息切れがするようになり、悪いサイクルに陥ります。サイクルに入りこむと、病気がさらに進行していきます。
また、風邪やインフルエンザなどの呼吸器の感染症をきっかけとして、呼吸困難などの症状が悪化し、いつもの治療で改善しない状態をCOPDの「増悪」といいます。原因ははっきりと特定できませんが、ウイルスや細菌などの呼吸器感染症や大気汚染がきっかけで起こることが多いです。増悪が起こると、肺機能が安定期よりさらに低下し、息切れの悪化、咳や痰の増加などの症状がみられ、そのほかにも、発熱や頻脈、倦怠感、疲労感、不眠などを伴うこともあります。COPDは増悪のたびに段階的に悪化するといわれています。増悪は、生活の質(QOL)をさらに低下させたり、命にかかわることもあるため、増悪を繰り返さない、増悪が起きたら早めに対応することが重要です。冬はインフルエンザなどが増悪のきっかけになることがあります。インフルエンザワクチンを接種し、うがい、手洗いなどをして感染を予防しましょう。

COPDの治療法とセルフマネジメント

COPDで肺胞が破壊され変化した肺を治療で元に戻すことはできません。ですが早めに病気を発見し、治療を続ければ、症状をやわらげたり、病気の進行を抑制することができます。呼吸困難の症状によって低下した運動能力や生活の質(QOL)を改善するためには、薬物療法に加えて、運動療法や栄養療法、日常生活の管理などを総合的に行う「呼吸リハビリテーション」をすることが重要です。また慢性的な病気のため、生涯治療を続けていくことになります。患者さん自身が病気と向き合い、うまく付き合う能力を身につけなければなりません。日々の体調の変化を把握し、どのように対応すればよいのかを意識しながらセルフマネジメントを継続することで、急な悪化を予防することができます。主なセルフマネジメントとしては、下記があります。

■COPD のセルフマネジメント

1.病気の理解
COPD の治療は長期にわたるため、患者さん自身が納得して治療を受けるためにも、自分の病気についてよく理解しておくことが大切です。
2.禁煙
COPDの最大の原因は喫煙です。すでにCOPD になっていたとしても、たばこをやめることで、その後の肺機能の低下率はたばこを吸わない人とほぼ同じになるといわれています。禁煙はCOPD の治療の中で最も重要です。
3.薬物療法
治療は気管支拡張薬を中心に行います。多くの場合は、主に気管支のみに作用し、全身的な副作用が起きにくい吸入薬を使用します。薬を使うことで、気道が広がり空気の通りがよくなるので、呼吸困難の症状が軽減します。
4.運動療法
COPD の方は運動不足になりがちです。体を動かさなければ筋肉が弱ってさらに動けなくなり、いっそう息切れが強くなります。無理のない範囲で体を動かし体力をつけ、悪循環を改善しましょう。
5.栄養療法
COPD になると、呼吸をするだけでもたくさんのエネルギーを消費します。食欲の低下などによって栄養不足になることもあるので、しっかりと栄養管理を行いましょう。肥満気味の場合は、脂肪が横隔膜を圧迫して息切れを助長します。肥満を解消し、標準体重を維持するよう心がけましょう。
6.在宅酸素療法
肺のガス交換(酸素、二酸化炭素の交換)の働きが著しく低下することで、血液中の酸素が不足する呼吸不全の状態になることがあります。そのような場合には、酸素を吸入する酸素療法を行います。現在は自宅でも行え、生活の質や運動能力の改善、増悪による入院を減らすなどの効果も期待できます。
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