医療者から見た地域医療のいま

地域医療を支える「かかりつけ医」?わが町のお医者さん?

医師は生き甲斐を感じられる仕事。
今は、次の世代にリレーをつなぎたい

2013. 12. 20   文/梅方久仁子

布施外科医院院長、香取郡市医師会会長 布施 修一 氏

機械に頼りすぎると、人間は弱くなる

便利になりすぎると、健康にはよくないわけですね。

布施 医療が進歩していろいろな機械ができて、全体的には健康になってきています。ただ、この10年ぐらいは便利さに頼りすぎですね。便利さに頼りすぎると、人間は弱くなって、感性も衰えてくる。

 今の若い医師は、私たちのように「見て覚えろ」ではできなくて、1度は説明してやらないといけないのだそうです。私が子どもの頃は、みんな「肥後守」というナイフを持っていて、遊び道具を全部自分で作っていました。でも、今の若い人は、刃物を扱った経験がほとんどありません。だから、メスの持ち方から説明しないといけない。基礎がないんです。

 機械に頼りすぎるのはよくないと思って、私は診療でもだんだん機械を使わなくなりました。最近は、レントゲンを撮るのをやめました。レントゲンは、つまりは放射線被曝ですから。最低限の感度の悪いレントゲンでも、だいたい1枚70マイクロシーベルト、感度がいいものは100マイクロシーベルトですよ。それで、きちんと見ようと思えば、4枚くらいは撮る。CTで25枚も撮れば、3000マイクロシーベルトくらいになって年間の被曝限度量を超えてしまいます。

 もちろん必要なら撮りますが、うちでは必要性があるケースはまれなんです。重傷の場合は、救急病院に行ってもらうしかないですから。ちょっと極端かもしれませんが、「外からさわれる骨が折れているかどうかなんて、レントゲンで見るな」と思いますね。

「なぜ撮ってくれないんですか」と患者さんに言われませんか。

布施 「経過を見ればわかることだから、被曝する価値はない」と説明しています。でも、「レントゲンも撮らないから他に行く」という人もいます。

なるほど。最近は、薬が出ないと不安だという人もいますね。

布施 私は、患者さんには「薬は毒ですよ」と説明しています。少量の毒を使って、悪いところを治すものなんだと。だから、必要のない薬はできるだけやめたほうがいい。15種類も飲んでいたら、薬同士がケンカしてしまいます。そのうえサプリメントを飲んでいるなんて、とんでもないですよ。

 病気というのは、早めに対処すれば、だいたい防げます。私は、ちょっとおかしいなと思ったら、すぐに医療用の薬で治してしまいます。だから熱を出すことなどないし、ほとんど病気らしい病気をしたことがありません。保険証を使って治療を受けたのは、61歳で初めて虫歯になったときくらいです。

 でも、風邪などで受診してくる患者さんに聞くと、だいたいは4~5日前から具合が悪いのに、用事があるとかいって先延ばしにしてしまう。ひどくなってから来るので、熱も上がるというわけです。