医療者から見た地域医療のいま

地域医療を支える「かかりつけ医」?わが町のお医者さん?

旧町内でただ一人の医者だったので
どんな患者さんでも診ました

2013. 01. 24   文/寺西 芝

まさしく“総合医”ですね。

橋場 地域の医者というものはそんなものだと思いますよ。こちらで開業したときには、子どももよく診ました。当初はやむを得ず診てましたが、10年ほど前に近くに小児科が開業したので、それからは少なくなりました。それでも、おじいちゃん、おばあちゃんがうちにかかっていると、その流れでお孫さんを連れてきたり、子どもを連れてくる親もいます。だから診れる範囲でやって、診れない範囲は小児科に送るということにしています。

かかりつけ医として診ている患者さんの数はどれくらいですか。

橋場 外来が1日平均130人前後、月に3000~3500人は診ていると思います。往診は10人ほど担当していて、午後に1日2軒ほど回っています。多いときには、往診で17~18人診ていた時期があります。おできを取ったりといった小さな手術は昼休みに入れていましたが、その頃は忙しくてそれができなかったですね。原則月1回の往診なので10人だと5日あれば回れます。まあ、20人くらいまでならなんとか往診できると思います。

「在宅患者24時間支援システム」はこうして始まった

匝瑳医師会では、在宅の患者さんを見守る「在宅患者24時間支援システム」を立ち上げていますね。これを始めたきっかけを教えてください。

橋場 地域の保健所が、在宅で寝たきりになっている方々がどれくらいいるのかを調べたのですが、病気がちなのに主治医もいないという人がたくさんいることが分かりました。そこで主治医のいない寝たきりの患者さんに主治医をつけようというのがきっかけです。最初は保健師さんが回っていましたが、患者さんの容態が急変した時に、先生に連絡が着かなくて困るので、医師会で話し合った結果、1週間交代で医師会のだれかが対応することにしました。これは、病院で言うと「当直」のようなものです。原則は主治医が対応する。主治医が学会などで対応できないときは、24時間のシステムの掲示板などにあらかじめ伝言を入れ、他の医師が対応できるようにしています。また、匝瑳市民病院が後方病院を引き受けてくれています。院長がこのシステムに協力的なこともあり、非常に心強いです。

匝瑳市には何人くらい開業医がいらっしゃいますか。

橋場 匝瑳市では26~27名ですね。去年も1人お亡くなりになっているので、だんだん減ってきています。ここは、県内でも最も小さい医師会の一つです。これからどうやって若い医者を開業させるのかが課題です。息子さんが後を継いで医者になっていますが、地元にまだ戻っていないことも多いようです。なかなか戻ってきてもらえないようですね。