地域医療ニュース

第9回千葉県脳卒中連携の会について

文/千葉県医師会理事 松岡かおり

 本年度も千葉県・千葉県医師会の共催により第9回千葉県脳卒中等連携の会を2月18日、アパホテル&リゾート東京ベイで開催することができました。例年2月に行われ、同じ会場を使わせていただき、この時期の「定番」となってきたのではと思います。

 この会は、全県共用医療連携パスを推進する会から始まっていますが、平成26年度からは、脳卒中患者の退院時における病院と在宅医療・介護関係者との連携の仕組みづくりを主軸にした事業として発展することとなりました。平成29年度には、脳卒中の枠組みを取り、疾患に関係なく、また、退院時のみではなく、入院時からの支援として「病院と地域で切れ目のない支援を行うための入退院時支援事業」となりました。 今モデル地区は①君津木更津市医師会 ②市原市医師会 ③千葉市医師会 ④香取郡市医師会 ⑤印旛郡市医師会(成田地域)となります。

 今回はメインテーマを「ときどき入院、ほぼ在宅」とし、基本的には例年通りの構成でしたが、今回はケアマネジャー向けの講演会は中止しました。ケアマネジャーには自由に各分科会や模擬カンファレンスへ参加できるようにしています。また、初めての試みとして歯科医師・栄養師・言語聴覚士の分科会をひとつにして、「摂食嚥下の連携を考える」をテーマに、午前中を通して千葉県の摂食嚥下ネットワークについて検討を行いました。その他、リハビリテーション職・医療ソーシャルワーカー(MSW)・看護職・薬剤師の職種別分科会が開催されました。リハ職では千葉県を3地域(県北・県央・県南)に分けて地域性を生かした連携について確認。MSW分科会では【転院時における地域生活連携シートの活用について】のグループワークが行われました。看護職分科会ではテーマを「安全で安心な在宅生活を送るには」とし、急性期・回復期からの退院支援と共に、在宅看護師の「生活」を再構築する活動についての発表がありました。薬剤師分科会では「ポリファーマシーを解決する糸口」というホットな話題でのグループワークが行われました。

 医師部会では「実践!模擬多職種退院カンファレンス」第4回を開催しました。今回の症例は脳梗塞がベースで肺炎を繰り返し、徐々にADLが落ちてきている方の意思決定支援が盛り込まれています。新しくなった地域生活連携シート「入院時A表」「退院時B表」の活用とともに、終末期にむけたリビングウィルをグループで考えました。

 第二部では、主催者である千葉県健康福祉部 岡田就将部長、千葉県医師会 田畑陽一郎会長の挨拶の後、「入退院時支援事業報告」「シンポジウム」「講演」を行いました。

 「入退院時支援事業報告」では、私から入退院時支援事業についての紹介を行った後、5つのモデル地区医師会 ①君津木更津医師会 ②市原市医師会 ③千葉市医師会 ④印旛郡市医師会(成田地域) ⑤香取郡市医師会より現状報告を頂きました。君津木更津医師会では、入退院支援モデル事業運営委員会を立ち上げ、アンケート調査を実施、「医療・介護連携窓口一覧表」の周知や「地域生活連携シート」の活用について検討しています。市原市医師会では「市原保健医療圏退院支援ルール」を作り、ケアマネジャーの有無によって、地域にどのように声をかけるかのルールが取り決められました。千葉市医師会では既存の大腿骨頸部骨折地域連携パスネットワークを活用し、意見交換会を開催、病院の入退院支援連絡先一覧表の作成を行うことになりました。印旛郡市医師会では入退院支援モデル事業推進委員会を発足し、「脳卒中」「肺炎」「大腿骨頸部骨折」の3疾患を対象に現状認識と問題の確認から開始したとのことです。香取郡市医師会では、県立佐原病院が事務局となり、「香取地域の医療と介護がつながる委員会」が発足し、入退院ルールのたたき台を作成しているそうです。地域ごとの特色が出てきていると感じる発表でした。

 次に、シンンポジウム『変化する退院支援の現状を考える』として、東京歯科大学市川総合病院・松戸市立総合医療センター・五井病院から各病院の現状の報告と討論が行われました。市川総合病院では退院支援を実施する看護師の育成を目的に「在宅療養支援看護師育成研修」を開始。また、訪問看護師と介護支援専門員とのスムーズな連携を目指して「ネットワーク協議会」を立ち上げたとのこと。ポイントとしては、医師にも在宅療養のイメージを持ってもらうこと、退院支援計画と看護計画を連動させることなどが挙げられました。松戸市立総合医療センターには、入退院支援センターが設置されており、病棟では多職種が集まって大小のカンファレンスを開催しているとのことです。五井病院からは退院で終わりなのではなく、生活のスタートという視点、レールに乗らない所こそが大変であるという実体験を語っていただきました。また、施設で最期をと思っていても、最終的に入院せざるを得ない状況があることも言及されました。各病院とも地域連携を大事にしながら色々工夫されていることがわかりました。

 シンポジウムの後は、松戸市医師会理事/あおぞら診療所院長の川越正平先生から「病院と地域をつなぐために ~二人主治医制と地域バーチャル病院の推進~」の講演をいただきました。

 病院を地域の中に位置づけ、地域が一つの病院としての機能を持つ「地域バーチャル病院」として考えることを提唱されました。松戸市ではそのマネージメント機能を担うものとして、「松戸市在宅医療・介護支援センター」が設置されたとのこと。その役割には大きく3つあり、「二人主治医制」「困難事例への相談支援・アウトリーチ」「在宅医療のスタートアップ支援・質向上」に取り組んでいます。「二人主治医制」とは、専門性や救急を請け負う病院の主治医の他に、かかりつけ医を持つことの推奨です。かかりつけ医は、生活の視点を持ち複数の慢性疾患を管理し、その人に伴走する役割があります。初めは病院への呼びかけから始まり、かかりつけ医側の名簿を作成し活用しているとのことです。「困難事例への対応」は、日常圏域ごとに「地域サポート医」を配置し対応しています。「地域サポート医」は地域包括支援センターやケアマネジャーからの相談を受け、実際患者さんの所に訪問することも行っているようです。「在宅医療を始めたい人のスタートアップ」は、報酬請求事務への支援の他、多職種が訪問に同行し多職種の視点を享受、24時間対応訪問看護との連携などで、在宅医療を支えています。

 川越先生の絶妙な語りに、会場の後ろでは立ち見が出ている状況でした。

 終わりに分科会報告と全体の総括が行われました。入退院時支援推進委員会委員長 古口先生からは「千葉県脳卒中連携の会」から、全ての疾患に対応できる地域のルール作りを目指して「千葉県脳卒中”等”連携の会」と改めたことについてのお話がありました。地域連携・医療介護連携を地域包括ケアシステムの構築につなげようという目標も頂きました。

 一日という長い会でしたが、総勢約712名の参加でした。多数の方々にご参加いただきました。本当にありがとうございました。

 最後になりますが、この会は有志として多職種が集う千葉県脳卒中等連携意見交換会が中心となって、開催されています。関係者の方々には改めてこの場をお借りしまして御礼を申しあげます。

 次回は第10回記念大会を行います。また来年お会いしましょう。

千葉県医師会理事 松岡かおり

PDFファイルダウンロード

 第9回千葉県脳卒中等連携の会 冊子 (7.51MB)
 第9回千葉県脳卒中連携の会 模擬カンファレンス配布資料 (2.96MB)
 モデル事業報告(君津・市原地区) (527KB)
 シンポジウム「変化する退院支援の現状を考える」 (2.24MB)
 当日の様子(写真) (292KB)