地域医療ニュース

第8回千葉県脳卒中連携の会について

文/千葉県医師会理事 松岡かおり

 本年度も千葉県・千葉県医師会の共催により第8回千葉県脳卒中連携の会を開催することができました。例年2月に行われ、同じ会場を使わせていただき、この時期の「定番」となってきたのではないかと思います。

 この会は、全県共用医療連携パスを推進する会から始まっていますが、平成26年度からは、脳卒中患者の退院時における病院と在宅医療・介護関係者との連携の仕組みづくりを主軸にした事業として発展することとなりました。今年が3年目となります。

 今回はメインテーマを「ときどき入院、ほぼ在宅」とし、例年通り、午前は専門職ごとに分かれての分科会、午後は全体会という構成としました。

 午前に行われた第一部では、4回目となる医療・福祉職とケアマネジャー向けの研修会が行われました。この研修会では2講演を予定し、各職種からケアマネへのメッセージという形で持ちまわりでさせていただいています。今回は、歯科医師からは誤嚥性肺炎予防のための「知っておきたい退院時の口腔機能評価」、管理栄養士からはサルコペニアやフレイルの予防のための、おうちで行う「家庭の栄養学」という題でご講演いただきました。いずれの演題も「体を強くして、疾病を防ぎ、安心して地域ですごすために」どうしたらよいか、という共通のテーマであり非常に勉強になりました。

 職種別分科会は薬剤師・看護師・リハ職・歯科医師・栄養士・MSWに分かれて行われました。薬剤師分科会では薬剤シートの改訂を決定。看護職分科会では「膀胱留置カテーテル」という題を元に病院間での継続看護について討議されました。リハ職分科会では3圏域に分けて、それぞれの地域の「退院支援」についての発表が行われました。歯科医師分科会では在宅歯科医療について、栄養師部会では「在宅向けの栄養シート」の開発、MSW部会では「転院時情報」についてグループワークが行われました。医師部会では、第3回「実践!模擬多職種退院カンファレンス」を開催しました。このグループワークでは、脳出血がベースにある方で復職希望のある方をどのように支えていくか、病院と地域のスタッフが一緒に考える機会となりました。ここでは今年度改訂されたばかりの「地域生活連携シート」を実践で使用するという試みを行っています。今回はグループワーク参加者・見学者を合わせると約250名の方となりました。この資料については公表しますので、ぜひ地域でもご活用いただければと思います。

 第二部では、主催者である千葉県健康福祉部 古元重和部長、千葉県医師会 田畑陽一郎会長の挨拶の後、「退院支援事業報告」「基調講演」「シンポジウム」「分科会報告」を行いました。

 「退院支援事業報告」では、県行政から今回の事業内容、県医師会から昨年度行われた実態調査のまとめ、退院支援モデル地区である君津木更津医師会、市原市医師会から経過報告がありました。

 「基調講演」は厚生労働省保険局医療課主査の天辰優太先生より「平成28年度診療報酬改定の概要と退院支援に関する政策について」のご講演をいただきました。この改定で、従来の地域連携診療計画料が廃止され、退院支援加算と地域連携診療計画加算が創設になりました。きめ細かな退院支援が要求されることになり、その詳細を伺いました。

 「シンポジウム」では『地域で動き出した入退院支援』というテーマで各地域の入退院支援の実情をお聞きしました。まずは先に千葉県健康福祉部健康福祉政策課、吉水雅子さんから、今回の県事業の目的と内容を頂き、その後市原市医師会、中村文隆会長から市原市独自の情報共有シートを使った「市原市保健医療圏退院支援ルール」のご発表を頂きました。君津木更津医師会、竹内正人先生からは3つのワーキングを作って活動していること、「入退院支援ルール」を可視化したことなど具体的な取り組みが紹介されました。柏市医師会、古田達之先生からは、回数を重ねた多職種の連携会議やICTを使った情報システム、在宅医療・介護多職種連携柏モデルについてのお話がありました。最後に船橋市在宅医療ひまわりネットワーク、看護師佐々木ゆかりさんから、船橋では介護者が同じ視点を持って患者を支える「みちしるべ」として、「入退院支援のための心得」を作成したとのこと。地域ごとにシステムがあり、考え方があると改めて実感し、こういったシンポジウムを糧にして、自分の地域へ持ち帰っていただけたらと思います。

 終りに分科会報告と全体の総括が行われました。脳卒中患者退院時支援推進委員会委員長 古口先生からは縦の連携、横の連携とそれを面で支える、入退院支援ルールを千葉県標準方式として活用できないかなどの提案があり、幕となりました。

 一日という長い会でしたが、総勢約640名の参加でした。多数の方々にご参加いただきました。本当にありがとうございました。

 最後になりますが、この会は有志として多職種が集う脳卒中意見交換会が中心となって、開催されています。関係者の方々には改めてこの場をお借りしまして御礼を申しあげます。

千葉県医師会理事 松岡かおり

PDFファイルダウンロード

第8回千葉県脳卒中連携の会 冊子 (2.18MB)
 第8回千葉県脳卒中連携の会 模擬カンファレンス配布資料 (2.66MB)
 基調講演 平成28年度診療報酬改定の概要と退院支援に関する
 政策について(スライド)
(2.92MB)
 当日の様子(写真) (175KB)
 君津圏域退院支援ルール&シート (1.84MB)
 市原保健医療圏域退院支援ルール&シート (355KB)