地域医療ニュース

住民の命を地域全体で救う!
長生郡市の先進的な取り組み

2013.11.28   文/大森勇輝

講習を受けた中学生が心肺停止に陥った父親を助けた!

 そもそも、このような長生郡市の中学校を舞台とした取り組みが始まったのは2011年のこと。同地域には救急救命センターが存在しないため、救命技術を身につけることを通じて、「命に対する意識と救命率の向上」を図ることが目的とされた。そして、まずはテストケースとして、茂原中学校など一部の学校で、夏休みの部活動の時間を使って救急実技講習が行われたのである。

 その後、地域の全中学校を対象に広げることが模索されたが、ネックとなったのが講習全体で3時間もかかるということ。授業時間の関係で、3時間まるまる講習に割くのは難しいと考えられたのだ。そこで、あらかじめ保健体育の授業1時限を使い、DVDや資料を通じて心肺蘇生法を予習し、実習時間を2時間に短縮することで、講習を授業に組み込むことができたのである。

 実際、2012年、当時試行中だった救急実技講習を受けた長生郡市の中学2年生の女子が、講習の2カ月後、自宅で心筋梗塞で倒れた父親に救急隊の到着まで蘇生法を施したことにより、一命を取り留めたという出来事もあった。その一件が、地域一丸となって救急実技講習に取り組む原動力にもなったという。

全員がAEDを使った心肺蘇生法に挑戦。この訓練により、だれかの命が救われるかもしれない。

命の大切さを学ぶという教育効果も?

 また、いわゆる「ふるさと納税」制度を使って同地域出身の医師が寄付をし、救急救命の訓練キットも充実したという。さらに、講師として非番の救急隊員も参加するなど地域の様々な人の協力により、講師とともに生徒が生で実習できる全国的にも珍しい救急実技講座を長生郡市全体で開くことができたのである。

 この講習は、2014年2月まで長生郡市の各中学校で行われることとなっている。長生郡市広域市町村圏組合の関係者は、今後も同様の取り組みを広げていきたいと抱負を語る。

 これが広がって行けば、講習を受けた人がだれかの命を救うことにもつながっていくだろう。また、中学時代にこういった活動に触れれば、命の大切さを学ぶという教育効果もあるのではないだろうか。いろいろな意味で意義のあるこの活動、ぜひ別の地域にも波及してもらいたいものだ。