地域医療ニュース

医療と福祉の連携を市民の視点で考える
地域シンポジウムが東金市で開催

2013. 06.03   文/大森勇輝

「24時間365日体制」についての率直な意見交換

 この両者の発表に続いて、基調講演を行ったさんむ医療センターの篠原靖志氏と、吉井氏、富田氏をパネリストに、本会の冒頭であいさつを行った地域医療を育てる会の藤本晴枝氏をコーディネーターに迎え、休憩中に回収したアンケートの内容をもとにした、パネルディスカッションが行われた。

講演者全員参加でパネルディスカッションが行われた。(クリックすると拡大します)

 なかでも、三氏とも問題点を指摘したのが「24時間365日体制」についてである。さんぶエリアネットの吉井氏は、24時間365日応対を掲げてはいるものの、実際とのギャップに悩んでいると率直に指摘。現状は、夜の11時過ぎまでいるが、相談員4名体制なので相談先にすぐに向かうのは難しく、家族に対応してもらったり夜間救急が可能かどうか病院へ連絡したりすることもあるという。ただし、家庭環境を知ることが重要なので、臨機応変に訪問するよう心がけつつ、24時間365日体制を維持していきたいと語った。

 一方、片貝薬局の富田氏は、病気は待ってくれないので、それに対応するのは医療者として当たり前だが、実際にはなかなかできないと吐露。ただし、24時間365日を標榜しないと患者が不安になる。年に2、3回真夜中に起こされることもあるが、なるべく対応するようにしているという。また、次世代を育てるため、医学生や研修医、薬学生の研修を受け入れ、とりわけ在宅患者訪問などを体験させているとした。

 さんむ医療センターの篠原氏は、やはり勤務医として24時間365日をうたうのは大変だと率直に語った。実際に、30代半ばすぎで赴任した当時、最高年間4000台救急車の受け入れをした結果、医療が崩壊したという。その代わり、24時間365日の発想で行っているのが現在の緩和ケア。なかなか実現は難しいうえに、事実、都心には24時間365日を標榜する医療機関が多いが、実際にはできていない。そこで、訪問看護などを交えながら、それに近い緩和ケアを行っていきたいと述べた。

 そして、最後に藤本氏が、相談相手や連絡先の有無など、人と人とのつながり度が高い人ほど、健康度が高く、つながりが低い人ほど健康度が低いという埼玉での調査を例示。人と人との関係をキープするという、日常でもできることこそが大事だと指摘し、会を締めくくった。