地域医療ニュース

「がんと向き合う・地域で支える ?ケアタウン小平の取り組みから?」をテーマに匝瑳市で在宅ケアフォーラムが開催

2013. 04.16   文/梅方久仁子

緩和ケアとは、全人的なケア

ケアタウン小平クリニック 院長 山崎章郎氏

 その後は、いよいよ山崎氏の講演だ。「がんと向き合う・地域で支える ?ケアタウン小平の取り組みから?」と題する講演の概要を紹介しよう。

 山崎氏は、1975年に千葉大学医学部を卒業し、大学病院第1外科に8年間勤務した。その後、地域の第一線の病院で働くことを決意。忙しくなる前に、学生時代からの夢をかなえようと、船医として、遠洋漁船や南極調査船に乗船した。そして、船内で時間つぶしのために何気なく読んだ『死の瞬間』(エリザベス・キューブラー・ロス著)という本に目を開かれた。それまで終末期に行ってきた医療が、いかに医療者中心だったかに気づいて、患者さん主体の医療を目指すようになる。

 1984年に当時の八日市場市民病院(現・匝瑳市民病院)に着任。1985年にはいろいろな人が集まって勉強する八日市場ターミナルケア研究会を発足させた。1986年には柏木哲夫氏の本を読んでホスピスを知り、自分が取り組む課題とする。1988年には『死の瞬間』の著者キュブラー・ロス氏と出会って、熱心に話をする機会を得た。

 キュブラー・ロス氏によれば、死に直面するような状況の人たちは、4つの苦痛に直面する。身体的苦痛、社会的苦痛、精神的苦痛、スピリチュアルペイン(宗教的苦痛)だ。それぞれがすべて癒やされて、はじめて全人的苦痛が癒やされる。

 世界保健機関(World Health Organization: WHO)による緩和ケアの定義は、「生命を脅かす疾患による問題に直面している患者とその家族に対して、疾患の早い段階から痛み、身体的問題、心理社会的問題、スピリチュアルな問題に関してきちんとした評価を行い、それが障害とならないように予防したり対処したりすることで、クオリティ・オブ・ライフ(QOL、人生の質)を改善するためのアプローチである」となっている。これは、ホスピスでやることと基本的には同じ。身体の痛みを取るだけではなく、全人的なケアが必要だ。

エリザベス・キューブラー・ロス氏と対話する山崎氏(クリックすると拡大します)