地域医療ニュース

災害時の被害を最小限にするにはどうする?
災害をテーマに地域医療フォーラムを開催

2012. 04. 24   文/梅方久仁子

震災は、まだ現在進行中

 約10分間の休憩をはさんで、次の講演が始まった。東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科・顎顔面外科学分野助教 中久木康一氏による「災害時の保健医療支援活動 ?東日本大震災で露呈された課題?」だ。

 中久木さんは、東京医科歯科大学大学院を修了後、東京医科歯科大学歯学部附属病院、静岡市立静岡病院などに勤務。口腔外科の歯科医師・研究者としてのキャリアを積みながら、災害時の保健医療活動について、さまざまな支援活動や研究活動に携わっている。東日本大震災でも、発生直後から継続的に支援活動に関わってきた。

 そんな中久木さんが、開口一番に訂正したのは、講演タイトルだ。被災地はまだ復興途上で、震災は現在進行中。だから「露呈された」ではなく「露呈されている」が正しいという。震災はまだ過去のものではないという現実を突きつけられる。

 今回の震災はあまりにも規模が大きく、地元の医療機関の被害も大きいことが、問題解決を困難にしている。たとえ地震の揺れや津波による直接の健康被害を免れても、長期にわたる不自由な避難生活や、医療・介護サービスの不足、家族が被災して支援する余裕がなくなったことなどから、健康状態が悪くなる高齢者や障害のある人が増え続けているという。

 さらに、支援にあたっての問題点、配慮すべきこと、コーディネーターの重要性、普段から何をしておくべきかなど、話題は多方面に及んだ。中久木さんが実際に出会った被災者の具体例や写真が随時織り交ぜられるので、話が現実味を帯びて感じられる。

中久木氏は「コーディネーターの絶対的必要性」を説く

 講演内容については、以前紹介した記事「災害時に地域の保健医療を守るには? 『普段からできること』と『地域の力』」と重なる部分が多いので、参考にしてほしい。

 なお、今回の講演では、いすみ市自主防災組織助成制度や「ちば防災メール」(大雨・洪水などの警報、台風情報、津波予報などの防災情報をメール配信するサービス)など、地元の防災制度についても紹介されたので、地元の人には防災をより身近なものと感じられたのではないだろうか。

 2つの講演は、災害に立ち向かうには自分は今何をすればいいかを考え、行動を起こすきっかけになったはずだ。1人1人の変化は小さくても、それがつながれば大きなうねりになっていくに違いない。