2010.02
千葉県医師会健康教育委員会委員 工藤典代
子宮頚がんを引き起こすヒトパピローマウイルス(HPV)に対処
平成21年に新たなワクチンが厚労省で承認されました。そのひとつにヒトパピローマウイルスワクチン(HPVワクチン)と呼ばれるものがあります。耳慣れないワクチンですが、何を予防するためなのでしょうか。
ワクチン(予防接種)というと、一般的には「感染症の予防のために接種する」と考えます。ヒトパピローマウイルス(HPV)はいったいどんな病気を起こすのでしょうか。実はこのウイルスは子宮頚がんを引き起こすことが分かっています。
子宮頚がんは1年間に約12000人の女性が発症し、約3500人が死亡している女性にとってはかかる可能性の高い癌の一つです。ウイルスが原因となりますから、「ワクチンで予防したい」、との思いは予防医学の面からも切なる願いでした。感染したからといって、すぐに癌になるわけではありませんが、長く感染した状態が続いていると癌になる可能性があるのです。
今回、子宮頚がんの予防になるHPVワクチンが平成22年2月にワクチンが市販されるようになり、接種することができるようになりました。ヒトパピローマウイルス(HPV)に接触しても抗体があれば、感染しないで済みますし、子宮頚がんになる可能性も減らすことができます。
では何歳ぐらいで接種するといいのでしょうか。接種の対象年齢については様々な討議がされました。感染のきっかけは性的接触によることが多いために、できれば子どものうちに、と思うのですが、厚労省で「対象者は10歳以上」と決められました。
一旦感染を起こしてしまうとワクチンをしても無駄になるのでしょうか。HVPはほとんどが一過性の感染で、何度でも感染を繰り返します。したがって一度感染した可能性があってもワクチンをしたほうがいいと考えられています。
また、ワクチンをしたから絶対に子宮がんにならない、ということではありません。子宮がんにはHPVが原因となる子宮頚がんと、HVPとは関係なく発症する子宮体がんの2種類があります。子宮体がんは子宮頚がんに比べ頻度は少ないのですが、残念ながら子宮体癌には予防法はありません。ですのでワクチンをしたから、と言って、定期的な検診をしないで済む、というわけにはいきません。HPVワクチンを接種し、定期的に検診を受けましょう。
現在のところ、HVPワクチンは3回の接種が必要で、かつ自己負担となります。一部の自治体では一部公費負担となっているところもあるようです。長い目で見るとワクチンにかかる費用よりも、子宮頚がんで失われるもののほうがずっと多いのです。この機会にHPVについて考えてみましょう。地域の小児科や内科、産婦人科などで相談に乗ってくれますし、接種が受けられる医院もあります。ぜひこの機会にHPVについて調べてみましょう。詳しくは日本産婦人科学会のホームページなどをみてください。
クイズ
1.ウイルスが原因で癌になることがある?
(a)ほんと (b)うそ
2.ヒトパピローマウイルスで起きる病気はなに?
(a)乳がん (b)子宮頚がん (c)喉頭がん
3.ヒトパピローマウイルスワクチンで予防できる子宮がんは次のうちどれ?
(a)子宮体がん (b)子宮頚がん (c)卵巣がん
4.ヒトパピローマウイルスワクチンは一回接種すればよい?
(a)一回でよい (b)3回必要 (c)毎年必要
5.ヒトパピロームウイルスワクチンの予防接種をしたら、子宮がんにならない?
(a)子宮癌にはならない (b)他のタイプの子宮がんになる可能性がある
6.ヒトパピロームウイルスワクチンを接種したら子宮がん検診はしないでよい?
(a)しないでよい (b)子宮がん検診は必要
答え
1.(a)ほんと 2.(b)子宮頚がん 3.(b)子宮頚がん 4.(b)3回必要
5.(b)他のタイプの子宮がんになる可能性がある 6.(b)子宮がん検診は必要